本記事では、実写化映画作品となった「ホムンクルス」の原作漫画についてのネタバレと感想を紹介しています。
ラストの結末が理解できない、謎だ。という声も多かった本作品ですが、ミステリアスなストーリーをキャスト陣がどう作り上げていくのかも気になりますね。
ホムンクルス実写化のキャストについて
現在公開されている主演は、以下の通りです。
- 名越:綾野剛
- 伊藤:成田凌
- ななみ、ななこ:岸井ゆきの
- 女子高生:石井杏奈
- 組長:内野聖陽
- 監督:清水崇
このキャスティングからわかる通り、成田凌の女装が見られるという期待が出来ますね!
エンディングまで再現された場合には、綾野剛の丸坊主シーンも見られるでしょう。
清水崇監督は日本ホラー映画界で有名な人物です。
「呪怨」「富江」などを手掛け、世界的にもジャパニーズホラーの騎手として知られています。
非常に原作の山本英夫と相性が良さそうです。
ホムンクルスはかなりショッキングなシーンが多い作品です。
- 自分で頭蓋骨にドリルで穴を開ける。
- 自傷シーンや「精子喰い」シーンなどの描写がある。
- 人と怪物が混在した「ホムンクルス」の表現がリアルすぎる。
こうした部分をクリア出来るかどうかが見どころです。
さらに衝撃のラストの展開をオリジナルにするのか、原作通りにするのかも気になります。
個人的に望ましいキャスト
名越は怪演派、なおかつヨゴレも対応出来る安田顕さん!
伊藤はどこか女性らしさのある知的派が望ましく、医大生……菅田将暉さんとか良かったんじゃなかろうかと思いますね。
女装経験ありますし。
謎の女は全く知らない女優さんが良いですね。
本当の顔は「ブス」であることが最終的に求められるので、人選がつらいところです。
観客も誰?となるようなミステリアスさが良いと思います。
全体的にはどのシーンがどう再現されるのか?に期待を寄せたいところです。
『ホムンクルス』原作漫画のあらすじ
外資証券会社に勤務していた34歳男性・名越は会社を辞職し、高層ビルと公園の間で車中泊をする「半端ホームレス」として暮らしていました。
資金が尽き欠けていたときに、名越に声をかけたのが医学生の伊藤。
伊藤は彼に70万円を提示し、「トレパネーション」という額に穴を開ける手術の実験を依頼します。
名越は渋々承諾し、伊藤の「第6感が目覚める」という「トレパネーション」を受けます。
その数日後、彼は右目を閉じると一部の人間たちが怪物化して見えるという奇妙な体験をします。
伊藤はその現象と怪物化した人々を「ホムンクルス」と名付け、「心の歪み」が見えている状態であると仮説を立てました。
ヤクザの組長の過去、そしてブルセラショップの女子高生のトラウマ。
名越は「ホムンクルス」を通じて他人の無意識へ介入し、歪みを正します。
同時に名越は「自分自身のホムンクルス」について深く考えるようになっていくのです。
さらに、施術者である伊藤の暗い無意識にも介入することになります。
果たして名越の「実感が持てない」病は治るのか。
「ホムンクルス」は現実なのか。それとも幻覚と妄想でしかないのか。
伊藤の、そして名越の過去の女性に何があったのか……。
「殺し屋1」で有名となった鬼才・山本英夫の自分探し旅がここに出現します!
『ホムンクルス』原作漫画のネタバレと結末について
実写映画化されるホムンクルスの原作について、ネタバレと結末について紹介します。
組長=罪悪感、女子高生=記号集合体と見破る名越!
優秀なサラリーマンであった名越は、「俺は一体何者なんだ?」という疑問を抱えきれなくなり、車中でホームレス生活を送っていました。
名越は医大生・伊藤が持ちかけた「トレパネーション」という頭蓋骨にわずかに穴を開けるという手術を70万円で受けることを決意します。
数日後、名越の左目には怪物のような人間が映るようになりました。
街に出た名越は偶然、ヤクザ組長が「巨大ロボットの中にいる泣き顔の子ども」であることを喝破し、組長の心に潜む「罪悪感」の歪みを正すことに。
名越はこの現象を伊藤に報告し、伊藤は怪物は「ホムンクルス」であると説明します。
「トレパネーション」手術で脳の活性化が促進された名越は、脳が作りだした記憶地図、心の歪みが見えている状態だと言うのです。その怪物の図を伊藤は「ホムンクルス」と名付けます。
さらに、その「ホムンクルス」が示す心の歪みが名越に見えているということは、名越自身にもその歪みがあるということに繋がります。
名越はホムンクルスを消去する方法を探し始めるのでした。
伊藤が「ホムンクルス」探しで見つけたのは、ブルセラショップの女子高生1775番でした。
名越が接触した結果、砂の女だった1775番は、実は「記号」の集合体でした。
カネ、ガクレキ、セックス……そうしたモノに埋もれていた彼女は自傷行為を行うことで生きているという実感を得ていたのです。
名越は自分の車の内部で1775の歪みを暴き、1775番のホムンクルスを取り払うことに成功したのでした。
伊藤と名越の共通点は「嘘」だった!
過去の名越はヒト、モノ、カネを扱い全てを「記号」でとらえていました。
そうすることで名越は、自分自身を喪失。自らの精子を喰う、という癖だけが名越に「生きている」ことを実感させていました。
名越はホムンクルスにとことん向き合う決意します。
ところが、伊藤はこの「ホムンクルス」実験は完了したと名越に告げるのです。
名越は伊藤が何を隠しているのかを知るために、伊藤の「ホムンクルス」を探ります。
それは「水槽の水とグッピー」でした。
「オレとオマエは同じ荷物を抱えている」名越は伊藤に告げ、伊藤の歪みを探ります。
伊藤との対話の中で、名越は「整形している」ことを指摘されます。
名越は以前、自分が不細工で誰からも相手にされず、あらゆる部分を整形したのでした。
嘘の衣を身にまとっているのは名越自身だ、と嘲笑する伊藤。
名越はそこからヒントを得ます。確かに名越は外見に「嘘」をまとっていました。
伊藤は同じ「嘘」を持っていますが、自分の内側に「嘘」をついているのです。水槽内の水とグッピーが伊藤自身であるように。
名越はそれを表面化させるために、伊藤に女装を強制しました。
伊藤の心の歪みは、「自分自身への嘘」。
厳しい脳外科医の伊藤の父は、幼少期にグッピーの美しさに魅せられ自らもグッピーのように美しくなろうと女装した伊藤を叱り、水槽を破壊したのです。
伊藤はそれを無意識に封印していました。
歪みを受け止めた伊藤は、「ホムンクルス」から解き放たれます。
名越はセルフトレパネーションを施して「本当の自分」探しをする!
「嘘」は生の実感を喪失させることを知った名越。
名越は整形前の自分を思い出そうとしますが、思い出せません。過去を探す手がかりは「ホムンクルス」しかないのです。
そして名越は過去に自分の「ホムンクルス」を見てくれた「ななこ」を思い出します。
「なこっちゃんは雲なんだよ、白くて純粋で、つかみどころのない……」
ところが名越は翌日から「ホムンクルス」を見る能力を失ってしまったのです!
伊藤は名越へのトレパネーションを拒否、額の穴の塞がりを取るだけでした。
塞がりを取った名越は、ひとりの女性のみ「ホムンクルス」を発現されているのを発見。
その女性は「顔がコロコロと変化する」のです。
名越は「ホムンクルス」を取り戻すために、伊藤の器具を奪い、自ら頭蓋にトレパネーションを施したのでした……。
「顔がコロコロ変化する女性」は、名越が過去に遊んだ「ななみ」という女でした。
女は過去の名越を「嘘つき」と見抜いたことがあったのです。
名越は彼女こそが「ななこ」であると信じ込みます。
名越=ななこ・ななみ、そして名越は永遠に自分を探し続ける
女は高級ホテルで何人もの愛人をし、さらに彼女自身も醜さから整形を行った過去がありました。
彼女もまた、「本当の自分を見てくれる人」を探していたのです。
名越は強引に彼女を「ななこ」にするため、高級ホテルの一室で女にもトレパネーションを施しました。
これで彼女も真実の名越が見える……。
そのはずでした。しかし、彼女の顔はそのまま名越自身の顔に変化します。
名越はそのまま彼女と交わり、まさに「自分自身を実感」するのでした。
セルフトレパネーションの影響で、交わった後に女は動かなくなります。
名越はそのまま女を捨て、車でどこかへ放浪してしまうのでした。
それから一年後、田舎の海の近くに名越は住んでいました。
女性となった伊藤は名越を見つけます。
名越は伊藤に、まだ自分の「ホムンクルス」を見て欲しいと伝えるのです。
名越の頭部には複数の穴が空いていました。
彼はまだ本当の自分探しをしていたのです。
そこに名越の顔をした刑事と警察官がやってきます。名越は彼らを笑顔で迎えるのでした。
ホムンクルス原作漫画の感想や見どころ
ホムンクルスの原作を読んだ感想や見どころを紹介します。
「ラストがわからない!」読者続出!山本英夫真骨頂漫画!
「ホムンクルス」は10巻までの「伊藤のホムンクルス解決篇」まではかなりわかりやすく、ファンも多い作品でした。
それ以降の「謎の女~ラスト篇」が難解すぎることから、挫折したという声が多い傾向にあります。
山本英夫氏は割とショッキングなイラストを描く作家さんなので、その点においては「ホムンクルス」は成功した作品です。
ストーリーはもともと難解なドラマが多く「殺し屋1」のラストも明確に主人公がどうなったかは描かれていません。
今回はこの「ホムンクルス」がわかりやすい!となるように頑張って作品をプレゼンしたいと考えました。
独断解説1:女子高生の自傷と名越の精子喰いは「生の実感」のため
女子高生1775番は初期のわかりやすいトラウマ解消例です。
彼女は母親の期待する良い子を演じています。母親はまさに「記号人間」。
マニュアル世代と呼ばれる、レールの敷かれた人生を彼女に強要しています。
それに無意識的に反発している1775番は、歪みを「記号の砂まみれ」として身にまとっているのです。
注意点は彼女が記号人間になり切れてないことです。
これは彼女の自傷行為から明らかになります。
足首をカミソリで切り、血を舐めるときだけ彼女は生きているのです。
これは実は、名越の「精子を食べる」と結びついていると考えられます。
自傷はよく「芝居」「構ってほしい」の象徴とされます。
しかし、この自傷はそうではありません。
自傷をすれば痛い。不快な思いが走ります。
しかし、その時だけ「辛いことや現実を忘れる」ことも出来るのです。
さらに「心の傷を肉体に見せることで抑えられる」効果や、「生きていられると実感できる」というパターンが多く存在します。
1775番は自分を抑圧しています。
名越も同じです。何を抑えているのでしょう。
それは感情です。湧き上がる現実への不快感、嫌悪感。
この現実を逃げ出したいけれど逃げ出せない。感じたくない。ならば、他の「強烈な行為」で気をそらすことが必要です。
それが1775番の場合は自傷。名越は「精子喰い」です。
ただし名越の場合はかなり抑圧が強いため、相当なショッキング療法となっています……。
独断解説2:名越が「ホムンクルス」を一度失った理由
名越は一度「ホムンクルス」が見える能力を喪失しています。
そのタイミングは名越が「整形した自分は、嘘で固められていた。
しかし整形をしても、誰も『本当の自分』を見ない。
そして自分も、整形前の『本当の自分』を忘れた」と理解したときです。
そのために過去に、自分の「ホムンクルス」を見た恋人「ななこ」を探そうとします。
このタイミングで「ホムンクルス」を名越は喪失しているのです。
本当の、見えなくなった理由はここではないでしょうか?
名越はこの前日「自分の影を探すのはもう飽きた」と述べていました。
これは「ホムンクルス」、本当の自分なんてなかったという理解です。
おそらくそのため、名越は一度「ホムンクルス」を喪失したのではないでしょうか。
劇中では「物理的に穴が塞がった」ため、ホムンクルスが見えなくなったことになっていますが、それを果たしてそのまま読んでいいのかはかなり謎です。
その理由は、次に述べたいと思います。
独断解説3:セルフトレパネーションは違う能力を名越に与えた!
初回のトレパネーションと、2回目のセルフトレパネーションはおそらく同一の力ではないでしょう。
2回目は「心の歪み」だけではなく、「名越の見たいもの」を見ることが出来るほど、拡張された能力になったと考えられるのです。
最初「穴が塞がった」状態の名越は伊藤によって穴を塞いでいた汚れを除去してもらいました。
ところがその能力は弱く、「顔がコロコロ変化する女性」しか感知出来ません。
もっと見ることが必要だと思った名越は、ついに自分で頭蓋骨に2つ目の穴を開けます。
ここで1巻のトレパネーション手術を思い返しましょう。
最初のトレパネーションはかなり静かで、何よりも名越の意思で行われたものではありませんでした。
つまり、同じトレパネーションでも全く種類・動機・方法が異なるのです。
だからこそ、最初と同じ能力であるとは考えにくいのです。
2回目のセルフトレパネーションは、名越により強い「ホムンクルス」見る力を与えました。
強化され、名越は最終的に「見たいものを見る」能力が身についたと考えられます。
独断解説4:最終的に全員名越顔になる理由は「名越が存在したいから」?
このような強い「ホムンクルス」を見る力を持った名越は、過去に自分を嘘つきであると見抜いた女性の「ホムンクルス」を見て、「ななこ」であると信じます。
謎の女は嘘の身体と顔、そして話す言葉は全て嘘ばかり。
そんな女性は本当は「ななこ」であるわけではありません。
伊藤はこのことを指摘した上に、さらに名越には耳の痛いことを言い当てます。
「自分が相手を見ているだけじゃイヤ、見てほしいと思っている」という真実です。
名越はただ見てるだけではなく、「俺が見てるんだから、お前もオレを見ろ」と強要し始めていたのです。
ここは結構ポイントとなります。
嘘つきの女は、名越に強要され最終的にはトレパネーションを受けます。
その結果、彼女の姿は「名越」になってしまいました。
彼女が「名越」を見ているからです。そして名越は安楽を得ることが出来ます。
自分を見てほしいことから、整形した名越。でも誰も名越自身を見てくれません。
名越はだから過去の恋人「ななこ」を探しました。
謎の女もまた、自分の本当を見て欲しいから、整形をしたのに見てくれないというジレンマを抱えています。
そのため、名越に本当の自分を見てもらいたいと思い、トレパネーションを受けました。
これほど互いが、見て欲しいと願っていた。
「自分を見て欲しい」という「ホムンクルス」は自分自身となって現れます。
ここが正直、漫画「ホムンクルス」の最大の難関です。個人的にはこのような解釈をしています。
さらに名越は、「全員が名越の顔に見える」という状態に陥ります。
このことからも初回のトレパネーションと同じ種類のトレパネーションとは考えにくいのです。
名越は最終的に「人間が全員、自分と同じ顔」に見えるまで能力が高められてしまいました。
これは名越にとっては、願った通りの「自分を常に実感できる環境」です。
名越は「ここは天国か?」とつぶやきます。
そして同時に、ホムンクルスを分別出来なくなったことにも気づき、「それとも地獄か?」とも言うのです。